2024/6/2にストーリープレイイング『オムニバス』をプレイさせていただいたので、感想とプレイログ記録を書きました。
ネタバレを多分に含んでいますので、プレイ前の方の閲覧は非推奨です。
シナリオ自体の感想
以下からシナリオ自体の感想を記述しますが、私はストプレというジャンルの作品を遊ぶこと自体が初めてなので的外れな部分があるかもしれないことを念頭に。
2人の子どもが物語を紡ぐのと自分たちが読み上げるのとがシンクロしていて、本当に自分が物語を作り出しているかのような没入感があってとても良い作品でした。
その没入感の源泉、始点がどこかと考えると初めの『愛に生きた彼らの末路』だと思います。
物語の結末を考えろとゲームに指示される、その初っ端から「生か死か」を選ばされるのです。否応もなくPL達は頭を悩ませることになります。なぜなら自らの手で、それが例え空想の世界であっても、何かを殺すかどうかの決定権を握っていることになるのですから。
1番初めにその重たく究極の選択を持ってこられるおかげで、物語に対して真に悩む姿勢が初めから作られて終始没入することができたのかなと思います。
没入して自分たちがどのような結末を選ぶかを深刻に悩めるからこそ、その先の物語を大事にすることができました。
そのため「自分たちが選んでいない物語」をプレイ後に閲覧することができるのに、一切読みたいという気持ちが起きませんでした。私たちが導き出した唯一の物語なのだから「もしも」を見たくない。自分たちの思いと決断を乗せたこの物語が正史で、何の思いも積み上げていない「もしも」に良さを見出す猶予がない。
この非常に傲慢な独占欲を持てたのがシナリオに夢中になった証左だと思います。
また、紡がれるお話ひとつひとつも短編ながら何を1番伝えたいことかやテーマがはっきりしていてとても良かったです。
ストプレ初心者だと「読み上げ」自体に集中して物語の良さを味わうことが困難になりそうですが、この作品であればその心配は殆どないと感じます。
自分のプレイ卓についての感想
さて、ここからは自分の卓独自の感想になります。
私のそれぞれの物語や選択への感想、他PLへの感想がメインになります。
PL(ひうら)について
初めに簡単に今回の同卓PLを紹介します。
ひうらさん: 物語の明暗、盛り上がりや盛り下がりといったコントラストを表現できる読み上げが特徴。また、高い感受性と自分の感じたことの表現力のあるPL。
どちらかというと私とは逆のハッピーエンド派。
感受性の高さからよく感情に呑まれる。呑まれた結果、卓の翌日に余韻の味わいと体調不良になっていることが多々ある。
この特徴、とてもストーリープレイイング向きだと思いませんか?
物語の体験かつその語り手に向いていると確信をしていたため、今回同卓が決まってとても嬉しかったです。
ひうらさんも『オムニバス』の感想を書いていて、リンク掲載許可をいただいたので載せておきます。ひうらさん視点の話やゲームの詳細なやり取りを読みたい場合はこちらの記事をおすすめします。
PCについて
PC選択
PCイヴとノアの説明は「物語の紡ぎ手だ」のみで共通しています。それでもPC1イヴを選択したいと私は思っていました。PC1イヴは地の文読めるので選びたかっただけで、ほかに理由はありません。強く希望していたわけでもなく……。
ですが、お互いPC1イヴを希望していたため、1d100のダイスロールで数が大きいほうがPC1イヴを担当することに話し合いました。
ひうらさん>48
さきはる>11
ということで、私は賽の目に従ってPC2の担当となりました。今思えば、これは神の導きだったのではないかと思います。
RP方針
イヴもノアも「物語の紡ぎ手」という説明でPC同士の違いがありません。物語の中でも大きな差はないのではないか?とその時の私は思っており、できるだけRPの中でなにか違いを出したいと悩んでいました。
本編が始まると、
「台詞部分」は一人称、口調等、お好きに改変していただいて構いません。
と書いてあるではありませんか。
そこで初めの台詞から「君」という呼びかけを可能な限りすべて「あなた」と読み替えることにしました。口調を変えるのはあまり考えられなかったので、ほとんどそのまま読み上げました。
また自由RPではなるべくいたずらっ子に演じるように心がけました。それは冒頭読み上げ1ページ目に
するとノアは飄々とした様子で肩をすくめてみせた
という地の部分が見えたのが大きいです。
せっかくのひうらさんとのタイマンということで、出来るだけ相手がどう思っているかの話をPCとして振ることも意識しました。
愛に生きた彼らの末路
冒頭のシナリオ自体の感想にも記載しましたが、これは「生か死か」を選ぶ重たい物語です。愛する人間と世界の何からも逃げ出すか、死をもって世界へ仕返しをするか。
ひうらさんは自分が重要な選択の決定権を握るのがとても心苦しくなる人柄だと思うので、これをどう考えるのかすごく興味がありました。
物語でノアがイヴに楽し気に問いかけたのが、PLである私の態度そのものです。
ノアこと私の考えは発言そのままです。
ノア「僕としてはね、もちろん生きているってことは素晴らしいことだから、生きるを選びたいというのが本心なんだけど。きっと二人はいろんなことから逃げなきゃいけないし、人目を憚って、その後そのまま人生を歩むんだと思うと……それが心苦しくて。そんなつらい人生を歩ませていいものかって」
私の考えの根本は「生きるということは素晴らしい」ですが、それを人に押し付けるのは良くないと思っています。本人が自分の人生をどう評価したりどう感じているかはわかりませんから、生きているだけで素晴らしいと私が断ずるのはその人と人生を軽視している気持ちになってしまいます。それでも生きていてほしいと希いますが。
ひうらさんの捉え方でいいなあと思ったのは、
イヴ(ひうら)「二人で生きるっていうのは互いの生を願って生きていくことなのかなって、思うんだ。死は心中ってことだからね、これも互いに想っていることだと思う。生と死は想いの内容が違うんだと思う。だから僕は迷っているんだ」
という発言ですね。物語の解釈の視点が二人の関係性というところまで下りていて、真剣に悩んでいるのがとてもわかります。
イヴ「珍しいことを言ってもいいかい? 先に思ったのは『死』の方なんだ」
ノア「おや、本当に珍しいね!どういう風の吹き回しかな?」
イヴ「どうしてだろう。深く考えたりしていないんだ。そっちのほうがいいような、気がした。それだけだな……」
論理を飛び越えた直感。
一番テンションが上がりませんか?私がそうだったように、イヴもそうだったと思います。
だから、この後のイヴはこう話すのです。
イヴ「まったく……なんだかノアは意地悪な気がするんだけど……」
ここからノアが物語を紡ぎだします。
その中には宝石の名前がよく登場します。
私のGM・PLとして印象強いものシナリオに宝石がよく出てきます。
そこで因果めいたものを感じました。このPCは私が担当してよかったという実感がこのあたりから積み重なってきたように思います。
物語も愛に殉じた二人の姿がとてもドラマチックで、死を押し付けたのは私たちですが良い物語だったと思いました。
恋愛をモチーフにした物語であるせいか、宝石・雫・シルクなど視覚的に綺麗な表現がよく登場していてそれがより物語の美しさを後押ししていたように感じます。
現と泡沫を知る君へ
この物語は初めの「生と死」ほど直接的な選択ではありませんが、家族を失った男が仮想の家族と対話できる夢と誰もいない現実どちらを選択するかという重い話です。
私の考えはイヴで話した通りです。
イヴ「救いっていうのは現実にしかありえないと思っているんだ。さっきも言ったけど、生きてれば丸儲けだからね!生きているってことだけで素晴らしいことだと思うし、この先に幸せがあるかもしれないのに、死ぬっていうのは勿体ないことじゃないかなと思うんだよ」
救いを仮想世界に求めるというのは気に食わないですね。個人的には。
結局私たちが生きることができるのはこの現実世界にしかないのですから。もしも衣食住も生体機能もなにもかも仮想世界に依存できるのであれば話は別ですが。
ひうらさんも苦しい物語になったとしても、現実を生きてほしいということで意見が一致しました。珍しいですね。
そしてイヴことひうらさんの読み上げが始まります。
ひうらさんの読み上げの上手さが一番光ったパートだと個人的に思っています。男の高揚感、絶望、悲哀、安らぎの緩急がとてもわかりやすく話されていて、ひうらさんがこの部分の読み上げ担当でよかったと思いました。
この私たちのオムニバスのプレイ動画は身内サーバーにのみ残っているのですが、必聴ものです。今までひうらさんGMで物語を楽しんできた人たちこそ特に。
また、物語としても私はこの短編が一番好きです。
社長が男を救い、男が記事を書き、その記事が誰かを救うかもしれない。そんな素敵な救いの連鎖が起きている気がするのです。
永遠の墓守
物語の前にイヴとノアの会話が始まります。
ここでノアは私が担当するべきPCだったと確信しました。
ノアは物語を紡ぎながら、花を毟っているのです。無邪気な好奇心のあるキャラクター。落ち着いたひうらさんと私とでどちらが担当するかを考えたら、私だ!!となりました。
私が無邪気にしゃべっているのを、ひうらさんが落ち着いて傾聴しているその様は私たちを知っている人たちだと納得がいくものだと思います。
身内ネタはここまでにしましょう。
この物語での私の考えは、
ノア「枯れない花だって美しいと思うけど、枯れないってわかってたら見ることもお世話をすることもあんまり気にしなくなるだろう?
悠久の時を生きるうちに、時間に対しての意識が変わってしまうんじゃないかなって。二人でいる時間が有限だってわかっているからこそ、その時間を大切に生きることができるんじゃないかなって思う。
吸血鬼自身も長い時間を生きる苦しみをわかっているはずだから、それに彼女を付き合わせるのは美しくないと思うよ」
補足不要ですね。そのままです。
そしてひうらさんもまた同じ選択を希望していました。珍しいです。
ストプレやマダミスといった1回きりの物語で一番素敵なのは、その日その時抱いた感情という再現性の極めて低いものがみられるところです。
この時のひうらさんがその選択をした、ということに非常に価値があります。
それはこの感想を読んでいる皆様にとっても同じことです。
お互い「刹那」を選択しノアが物語を紡ぎだします。
その中にはまたしても宝石の名前が登場します。
また因果めいたものを感じました。
それだけではなく吸血鬼の話は先日マダミス『ヴァンピ!』をプレイした後の私にはとても重く、身近に感じました。
物語はとても悲しいものでしたが、愛する人の最期とその先に寄り添えるのは素敵で幸せなことだと思います。ですが独りで死ぬのはとてもさみしいことですから、吸血鬼のこの後の人生で新しく愛を見つけて、その愛が家族愛などどんな形かわかりませんが、愛に見守られて死んでほしいなと思いました。
絵描きの独白は何処にて
物語の前にイヴとノアの会話が始まります。
再び、ここでノアは私が担当するべきPCだったと確信しました。
イヴが物語を紡ぎますが、口ごもった時にノアが物語の先を語ってしまうのです。そしてノアは暗い物語へと導いてしまいます。
ハッピーエンド派のひうらさんが担当するイヴの物語を途中からバッドエンドに行きつきそうな物語へと導いてしまうのは、やはり私の役割でしょう。
さて、この選択についての私の考えは
ノア「筆を置いてほしいと思ったんだよ。だって、視力を失ったらきれいな世界を見ることができないでしょ。世界を見ることで絵を描くアイデアは生まれるはずだからね。
それに生きがいなんていくらでも見つけられるものだと思ってしまうからな」
ここで2つの生きがいを持ち、どちらかを優先すればどちらかの生きがいを失う知り合いの話をしました。物の捉え様と世界の不条理さ、そしてそれに抗う姿。それを欠片でも現実で知っていたので、こんな選択と発言になりました。
ここでイヴことひうらさんの素敵な発想として
イヴ「絵が描けるということは、僕たちのように物語を紡ぐ才能だってあるかもしれない。仮にそうだったとして、目が見えなくなってしまっては、物語紡ぐための色々なものが得られないからね。目が見えたほうがきっと彼にとってもよいだろうから」
というものがあります。
この物語をみたかったと切に思うくらい素敵な発想です。
新しい才能を見つけたりそれを育むということ自体素敵だと思いますが、それをこのストプレのPCの設定に乗っかって「物語の紡ぎ手」と結びつけられたのが、とても素晴らしく感嘆としか言えません。
お互い「筆を置く」という選択をし、イヴが物語を紡ぎます。
その中の一節で
「僕にとって絵を描くということは呼吸することと同義です。呼吸することをやめたら、すぐに人は死んでしまう……つまりはそういうことですよ」
とあります。
同じ絵描きの人間がそう話すのを聞いて、私たちが筆を置いて生きてと希った男は死んでしまったのではないかと思いました。命を救うことができる選択をしたと思っていたばかりに、とても怖かったです。
男は自分の才能を子供に継ぎ、男の才能が込められた絵は子供の心を打ち、……と才能や思いが継承されているのがとても素敵な物語だったと思います。
ジョジョファンとしては、継承には胸が打たれますよね。
オムニバス
ノア「……やっぱり、物語というものはいつだって幸せな終わりであるべきなんだよ。ねえ、君もそう思わない?」
イヴ「いいや。必ずしも幸せな終わりが良いものであるとは限らないよ。そもそも、幸せの基準なんてのは、酷く曖昧なものなんだから」
とあらすじにもあった台詞がエンディングにある。
あらすじの段階ではどちらがどのPCのセリフからわからなかったので、前者がハッピーエンド派、後者がバッドエンド派では?と話していました。
ところがどっこい!バッドエンド派わたしがノア、ハッピーエンド派ひうらさんがイヴです。逆です。
そのため出来るだけ意地悪に聞こえるように台詞を読み上げましたが、どう受け取られたかはわかりません!
物語の紡ぎ手、というのは運命を決定する神のことだった。
という締め方が上手くてよいなあと思いました。私たちが選んだ物語が正史だと裏付けられて。
また機会があればストーリープレイイングを遊んでみたいなと思いました。
一緒に遊んでくれたひうらさん、そして制作者のななしのよろずや様ありがとうございました。
最後にここまで読んでくださった方もありがとうございました!